石井邦知(こむすぽ編集長)
前回はスポーツと遊びの違いを認識しつつ、そのどちらでもない、どちらも含めた新しい考え方にこそ「こむすぽ」のめざす方向性があるのではないか――という考えを提起しました。子どものスポーツ、遊び環境にも同じことが起こっているのではないかと思います。
子どもの外遊びに足りない3つのもの
遊びよりも習い事を重んじる風潮が強まっている
子どもの遊び(外遊び)については、3つの不足がいま、問題視されています。時間・仲間・空間の不足です。
放課後は塾や習い事で忙しく一緒に遊ぶ時間をつくれない子どもは少なくないようですし、都内ではボール遊びを禁じている公園があるように、遊べる場所は減っています。さらに、9月のこむすぽオープンゼミで指摘もありましたが、「子どもを危険から遠ざける・危険から守る傾向にある」風潮も、公園で遊ぶ機会を減らしているのでしょう。
こうした外遊びをあまりしなくなったことで、一昔前の子どもたちが友達と一緒に外で遊ぶことで身に着けていたコミュニケーション能力や体力を、今の子どもたちは身に着けられないということも考えられます。さらに最近は、子どもが苦手とすること――コミュニケーションや運動面など――の克服を、家庭ではなく習い事で(つまりはお金で)解決しようという傾向が強くなっていると感じます。スポーツ家庭教師やかけっこ教室の需要が高まっているのもその証拠でしょう。
公園でボールが使えなくても楽しく遊べる
私が運営しているきゅぽらスポーツコミュニティ(総合型地域スポーツクラブ)では、一般的な公共の広場で、「親子スポーツ広場」という活動を定期的に行っています。埼玉県川口市のアリオ川口店前の芝生広場を中心に、3年間で70~80回実施しました。ボール遊び禁止となっている広場でも楽しめる遊びを試行錯誤して生み出し、親子や子ども同士がコミュニケーションを図り、体力もつける機会とすることが目的です。一つの道具で様々な遊び方を生み出し、走る・跳ぶ・投げるといった動作ごとのプログラムも体系化。特定の種目に偏らない、総合的な体力を身につけられる機会をできること、鬼ごっこ系の遊びとリレー形式で競うものが特に盛り上がることも分かりました。
活動している様子を見て、「何をやっているのだろう?」と近づいてくる子どももいて、そこで見知らぬ人同士で自然にコミュニケーションが生まれることもあります。
今後必要なのは「学びの場」と「関係者の意識改革」
親子スポーツ広場の活動は、こむすぽがめざしている「スポーツと遊びの中間」につながっていると感じています。ただこの活動は、「空間の不足」という課題はクリアできていますが、「時間・仲間の不足」は解決できていません。
これを解決するためには何が必要でしょうか。
まず親御さんにとって必要なことは、休みの日だけでもいいので、子どもと遊ぶ時間をつくること。「忙しいから無理」と思われた方に必要なのは、意識を変えてそういう時間をどうにかしてねん出しようという気持ちです。
たしかに「ボール遊び以外にどうやって遊んだらよいかわからない」「アイデアが思い浮かばない」という方も多いでしょうし、運動に苦手意識があるとなおさら難しいはずです。そこで必要なのは、こうした親御さん向けに遊び方を学べる場(講座)です。スポーツや子どもの外遊びを専門に活動している方向けには、インストラクター資格も存在し、学習の場が用意されています。今後はそれに近いに内容を親御さん向けにもカスタマイズさせることが重要です。
また、習い事の先生や学童保育の職員にも意識を変えてもらいたいと思います。
それは学習塾など、運動系ではない習い事です。10分でも15分でも子どもたちが外遊びする時間を設けます。
子どもを習い事に通わせている親御さんからは、「そんなのは目的と違う」というご批判はあるでしょうが、「子ども同士の交友関係を広げてほしい」「様々なことに対して楽しさを身につけてほしい」という気持ちもあるはずです。
学童保育は民間企業の参入もあり、増える一方ですが、女性が多いこともあってか、特に運動機会が限られたところもあるようです。そういった方たちに公園での遊び方を伝えていけるとよいのではないでしょうか。
以上提案を並べてみましたが、今後はこむすぽ的発想で、具体的な解決策をつくっていきたいと考えています。
↓↓進捗はこちら↓↓
https://comspo.net/column/ishii/recreation-innovation
石井 邦知 ISHII Kunitomo
2011年2月に埼玉県川口市を拠点に総合型地域スポーツクラブきゅぽらスポーツコミュニティを設立。主に(フットサルやバレーボールなどの)チームスポーツと(異業種交流、国際交流などの)テーマを掛け合わせた活動を行い、新たに30以上の新規の企画創出(協働を含む)を実現。
これまでの取り組みの標準化と他地域の展開を目指して、2014年3月に一般社団法人日本コムスポーツ協会を設立(代表理事)。
http://twitter.com/ComComSports