レポート

観戦もプレーも面白くなる「魔球」の正体とは――雑誌『ニュートン』の特集を読んで

深谷 友紀(こむすぽ編集部)

20150415

曲がる! 揺れる! 落ちる! 浮き上がる! そして消える!?
少年時代にワクワクした「魔球」が生まれるワケ

幼い頃に読んでいた漫画のキャラクターたちが操る魔球。漫画の主人公になったつもりで軌道を頭に描き遊んでいた記憶がありますが、現実にも「魔球」とよばれるものがあります。野球のナックルやフォーク、サッカー本田佳祐選手が得意な無回転シュート、テニスのナダル選手が操るエッグボール……。これら現実の「魔球」にはどんな秘密があるのでしょうか?

先日発売された科学雑誌『ニュートン』の2015年5月号で「魔球の科学」という特集が掲載されていました。これによると、投げたり蹴ったり打ったりすると、ボールに様々な回転がかかりますが、その回転によって生み出される「マグナス力」という力が生まれます。ボールの回転でボールの周りの空気の流れが変わり、その反作用によって発生するのが「マグナス力」というものです。

一流のスポーツ選手たちは、回転速度と回転軸を自在に操り「マグナス力」の大きさや向きを変えることで「魔球」を生み出しているのです。

直球は変化球? テニスのコーチに言われたことと同じ

記事では「魔球」として、野球のナックルボール、フォークボール。直球(実は科学的に見ると直球も「変化球」なのです!)、ジャイロスピン、サッカーの無回転シュートやバナナシュート、ゴルフのボールの秘密、バレーボールのフローターサーブ、テニスのエッグボールなどについて分析されていました。

目を引いたのは、野球の直球の話です。「マグナス力」を理解するには一番いい話でした。特にフォークボールと比べると分かりやすい。直球はマグナス力によってまっすぐに近い軌道を描きます。これに対しフォークボールは、自然の成り行きに任せて落ちる球とのこと。直球が不自然でフォークボールが自然というのです。これにはちょっと驚きました。

野球少年だった子どもの頃は、野球に関する本をよく買ってもらいました。その中に、投手が投げたボールの軌道の連続写真があり、「ボールはまっすぐに進んでおらず、少し落ちている。カーブは投げた瞬間から曲がっている」と書いてありました。物理の法則などよくわかっていない子どもだった私は、大きな衝撃を受けた記憶があります。

野球のナックルやサッカーの無回転シュート、バレーボールのフローターサーブは、無回転のためマグナス力は発生しません。ボールの縫い目や継ぎ目によって、空気の流れが目まぐるしく変わり、ボールに不規則な変化を与えているそうです。具体的には、ボールの中心を押し出すような力を与えるように、投げたり蹴ったりすればいいとのこと(なかなか難しいですが……)。

自分はテニスをやっているので、一番参考になったのがテニスの例でした。ナダル選手のエッグボールを例に、ボールにスピンをかける仕組みが図解されています。テニススクールでコーチが言っていることと同じで理解しやすかったということもあります。実際プレーする時に、頭の中でボールをスピンさせるイメージを描いて打ったほうが上手くなる気がしました。

今回の『ニュートン』の特集に触れてみて、スポーツを科学の視点からみると、観戦するにしてもプレーするにしても、新たな楽しみ方ができるように思いました。