浅野慎二(エンジニア)
3回目の「こむすぽオープンゼミ」は「スポーツで社会にインパクトを与えるためのIT(主にSNS)活用法を考える」と題し、1月30日に開催された。講師は、日本ブラインドサッカー協会(以下JBFA)のSNS担当者で、以前、こむすぽにレポート記事を寄稿してくれた久保田暁さんだ。
大成功に終わった世界選手権
ブラインドサッカー(ブラサカ)とは、視覚障害者に限らず健常者も同じフィールドでプレーできるスポーツ。ご覧になったことのない方はぜひJBFAのウェブサイトなどで動画を見ていただきたい。とても視覚に障害があるとは思えない選手たちのスピード感に驚かれるはずだ。
そんなブラサカの世界選手権が昨年11月、アジアで初めて日本で開催された。日本代表戦に限るとはいえ、有料のスタンドが満員になるという快挙を達成。IPC(国際パラリンピック委員会)からも評価される結果を実現した、運営サイドの話を聞くことがオープンゼミの目的だ。
大会中に活用したのは5種のSNS
JBFAのSNS担当者は、講師の久保田暁さん含め2名。いずれもボランティアで世界選手権のSNS運営も2人で乗り切ったという。
世界選手権で活用された主要なSNSは以下の5つ。
- Twitter:プレスリリース、メディアクリッピングなど
- Facebook:大会ハイライトなど
- Ustream:生放送、動画アーカイブなど
- アメブロ:スタッフブログなど
- YouTube:大会ハイライトなど
大会期間中もこれらの反応を分析し、「どのような情報発信が有効なのか?」を意識しながら運用方法をチューニングし、広報・集客効率を上げていったとのこと。海外からの思いもかけないアクセスもあったという。
今後の課題としては大会中の盛り上がりを持続するためにいかにSNSを活用するか。継続的な情報発信により新たなファン、スポンサーの獲得を目指している。
出席者からは、「観客が声を出せない(ブラサカではフィールドプレーヤーに指示を出す監督やコーラーがいる)ので、代わりにTwitterなどで応援するというようなスタイルが作れるのでは?」といったような発展的なアイデアも出された。
大会が成功し、いまでは各種メディアで取り上げられ、他の障害者競技からも「参考にしたい」という声が出ているブラサカ。こうした状況に到達した要因の一つとして、障害者スポーツの団体としては珍しく常勤職員がいる協会の存在と、「視点を変えたこと」が挙げられた。
ブラサカは、普及活動として「(ブラインドサッカーの存在を)紹介する」だけではなく、(それぞれの団体や地域が抱える課題の解決のためにブラサカを)「活用してもらう」という視点を持っているという。具体的には、ブラサカを教育に使う「スポ育」や、企業や団体などの研修を提案している。この視点の違いこそがアプローチ方法の違いにつながっている。こうした背景、関係者の努力があったからこそ現状だろう。
横のつながりが重要な障害者スポーツ SNSの役割は大きい
オープンゼミ後の交流会では、ブラサカに限らず、障害者スポーツ全般についての意見が出された。現在、障害者スポーツには、ろう者のための「デフリンピック」、身体障害者のための「パラリンピック」、知的障害者のための「スペシャルオリンピック」などのカテゴリーがあるが、認知度No1はやはりパラリンピックで、結果としてお金・人材の流れはパラリンピックに偏ってしまっていることが指摘された。
この日のプレゼンや、参加者を含めた意見発表、情報交換で出た内容は、ここで紹介できないものも含めて実に多様なものだった。この日の内容を総合して、障害者スポーツの普及に大切なのは、「横のつながり」ではないかと感じた。関係者や団体のつながりを深め、広げるにあたって、SNSの占める役割が大きいことは間違いないだろう。
プロフィール
浅野慎二 ASANO Shinji
1974年生まれ。スポーツ好きのITエンジニア。仕事の傍らヒューマンアカデミーの『スポーツマネージメント講座』修了。もっと気軽にスポーツを楽しめる世界を目指し活動中!!