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ロケットスタートで気分はアスリート、そして崩壊へ……【完結編・前篇】ーーシロウトマラソン挑戦記 Road to Tokyo(6)

2月22日。猫の日、もとい東京マラソンの日。東京が一つになるこの日、私は生まれてはじめてフルマラソンを走った。そして完走した。その記録2回にわたってお届けする。 濱田 優(こむすぽ編集部デスク)

第1回 「本番用シューズを買わせてもらえなかった」の巻
第2回 「答えはお尻」の巻
第3回 夏休みも7月は宿題を頑張るタイプ!?の巻
第4回 おっぱいができちゃった?――ジョギングを始めた理由と栄養摂取法の巻
第5回 LSDは「6回まわってペヤング超大盛り」の巻
第6回 ロケットスタートで気分はアスリート、そして崩壊へ……【完結編・前篇】(今回)

「スタートライン閉めますよ! スタートできなくなりますよー!」「え?」

東京マラソンは36000人が走るだけあって、スタートラインを超えるのは時間がかかる。最初からスタートブロックはAからKまでわけられており、私のブロックは後ろから2つ目のJ。ハナからスタートまでに時間がかかると思い、ぎりぎりに荷物を預けに行った。 しかし、あまりにぎりぎり過ぎたのかJブロックにはもう入れず、脇道に並ばされた。A-Kまでの全員が出た後に、脇道に並んだわれわれがスタートするという形だった。

500

すぐ近くのビル2階では、BMWの社員たちが応援してくれている(写真左上のビル)。降っているのかどうか微妙なほどの小雨のなか、20-30分ほど待たされただろうか。人が多いので風を感じず、たいして寒くない。

ようやくスタートした直後、仮設トイレがあったので、迷ったが並ぶことにした。スタートラインを超えた瞬間にチップが反応してタイムカウントが始まるのだから、その前に行っておいたほうがいい。

1-2人並んでようやく自分の番になり、個室に入ろうとすると、係員の男性が「スタート閉めますよ!」「スタートできなくなりますよー!」と呼びに来た。迷ったが、「とはいえ1-2分はあるはずだ」と思い、えいやと個室へ入室。音速の速さで放尿して個室を飛び出た。

曲がり角を曲がると、スタートラインがみえた。たしかに人はもうほとんどいない。おそらく最後のほうなのだろう。思えば私はこのときすでに気持ちがたかぶりすぎていた。

手元のスマホを操作し、GPSを自分の位置を探索させ、アプリを起動。練習で使っているruntasticに記録を残すためだ。そしてスタートラインを超える瞬間、スタートさせた。

「Session Started!」

Runtasticユーザにはおなじみの、女性の声が私の号砲となった。 平常心で走るため、いつも練習で聴いていたEXILEのSINGLE BESTをかける。最初に聴くのは曲順最後の「HERO」。これを聴いてから、最初に戻って順番に聴いていくのがいつものやり方。本番も敢えて同じようにした。

都庁前から飯田橋までは下り。
「スピードの出し過ぎは禁物禁物」と思いながら、それでも私は今思えばかっとばしていた。なにせ後方からのスタート、抜かれることはなく抜く一方。それに沿道からの声援がとても心地よい。 最初の1kmは聞き取れなかったのだが、1-2kmの間は5分8秒で走っている。

いかん。速すぎる。

わたしの予定では、
前半は5分40秒ペースでしのぎ、
20km前後の未知のゾーンに入るくらいから6分台前半へ。
そして最後の最後で7分くらいで、
都合、6分台キープしてサブ5(5時間切り) だった。

ちなみに1キロ6分45秒で走れば、4時間45分、1キロ7分で走れば、4時間55分。

だからペースを遅くせねば、と思っていたのだが、沿道の応援が気持ちいい。こんなに気持ちいいものかと嬉しく楽しくなり、ペースがどんどんあがっていく。

そして3-4km。ベストラップ、4分49秒をたたきだしている!

予定よりも1分も早い。この時すでに崩壊の序章、プロローグが始まっていたのに、当の本人は気づけずにいたのだ。 分かってはいるものの、遅くならないペース。もう気分はアスリートだ。周りの声援が自分のためのものにしか聞こえない。沿道から出された手に律儀にタッチしかえしながら走る。これは、自分が応援する側のときに、タッチされるとうれしかったからということもある。

10-11kmのラップが6分23秒とはじめて6分台になった。ここはちょうど有楽町、日比谷公園のあたりだ。このあたりは気持ちがすごく落ち着いていて、快調に走れていた。

10km

10kmを超え、芝公園を過ぎて13kmあたりまでの間は、写真(下)を撮ったりしつつ、まだなんとかもちこたえていた。家族の応援にも遭遇し、まだ余裕があった。

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そして品川の往復が15-16kmくらい。 実はこのあたりからちょっと気配が悪くなっていた。17-18kmが6分44秒。そして19-20kmははじめて7分台に突入した。南下するときには気持ちよく前を通り過ぎた増上寺だが、折り返して再び目の前を走っているときは、ちょっときつく、すでに時々歩いたりしていた。

本番前、まわりのフル経験者から「30kmで膝にくるよ」と言われ続けて注意していたのだが、とんでもない、20kmに到達する前に、「キテしまっていた」。原因は迷うべくもない、前半のトバシすぎが問題なのだが。

しかしまだまだ先は長い。何とか「大丈夫」と言い聞かせて走り続けた。 ようやく日比谷に戻り、晴海通りへ。中間地点はちょうど有楽町マリオンのあたりだった。

42.195kmの中間なのでだいたい21km強。最初で最後のLSDで走ったときよりも身体はキツかった。

「まだ半分もあるのか」

そういうネガティブな考えが既に頭を占めつつあった。。。 20km

次回予告 堂々完結!「東京の中心で甘いと叫んだケモノ」

プロフィール
HAMADA Masaru 1974年3月生まれ。新聞記者、金融経済月刊誌編集長などを経てウェブマガジン編集、映像ディレクター。スポーツは中学時代にサッカーを少々。いまはソフトバレーとジョギングをするが、少し前まで「マラソンなんて一生走らない」と思ってました。フルマラソンどころかハーフも10kmも走ったことがなかった。

* この記事は筆者のブログで公開されたものです。