内藤 公広(NPO法人デフテニスジャパン代表)
海外と日本の聴覚障害者テニスの金銭事情
7月12s日から10日間、聴覚障害者のテニスの世界団体戦「ドレセ・マエレ杯」がアメリカ・テネシー州チャタヌーガで行われ、日本代表も参加した。これは4年に一度行われる大会で(大会名は、「ドレセ(男性)・マエレ(女性)」という意味のフランス語と聞いたのですが定かではありません)、15回目。筆者は日本ろう者テニス協会の監督権コーチとして帯同した。日本は2007年のドイツ・ミュンヘン大会から参加しており、ドイツ大会では女子6位、男子7位。前回のトルコ大会では、女子6位 男子4位だったが、今回は女子7位、男子8位という結果だった。いい結果ではなかったが、若手選手が多く参加したこともあって実りもあった。
今回参加して思ったことは、日本は障害者スポーツに対する理解が世界に比べて遅れているということだ。
まずサポート体制。日本代表チームは今回「バーナフォン」という補聴器のメーカーの協賛があり、費用をサポートしてくれたものの、遠征費すべてが賄えたわけでなく20万円程度の自己負担が必要だった。
海外の選手に聞いたところ、フランスでは5社のスポンサーがついていた。インドのチームもサポートを受けており、「何故日本は国の代表として参加するのに日本企業が応援をしないんだ?」と逆に質問されるほどだった。
選手の育成に対しても違いがあった。各国のチームは必ず10代の選手が勉強に参加していた。今回女子の優勝チーム、台湾は4年前の大会にジュニアを参加させるなど育成したことが功を奏し、今回新たなエースとして活躍していた。
日本はジュニア期に聴覚障害者がテニスに触れ合う機会が少なく、ジュニアを遠征に連れて行く事へのハードルが高い。
障がい者スポーツと健常者スポーツの区別
どの国も選手たちを自国の代表として位置づけ、ふさわしい対応をしていることも日本との違いを感じた点だ。それは聴覚障害者という(スポーツ上の)カテゴリーが、健常者のそれと“並列で”存在しているからだと思う。車イス、ブラインドなども一つのカテゴリーとして認識している。差別するのではなく、単なる区別といったらいいだろうか。プレイヤーを見ていて、異なるカテゴリー同士の選手であっても、みんなで一緒に切磋琢磨しているのではないかと感じた。おそらくプレイヤーに限らず、国に帰ればそういう認識(単なるカテゴリーの違い)が国民の間に浸透しているように思った。この点、日本は各カテゴリーを最初から分けてしまう風潮があるように感じている。今回の大会参加は、日本の障がい者スポーツを取り巻く環境の遅れについても感じることができた。環境を改善するためにできることが何か、考えている。
PROFILE
内藤公広(NAITO Kimihiro)
NPO法人デフテニスジャパン代表
プロテニス選手として活躍。引退後、指導者として全国を目指すジュニアから一般の方々まで広く指導を行っている。2010年に日本ろう者テニス協会の日本代表コーチに就任、障がい者スポーツの現状を知り、障がい者と健常者をスポーツを通じて相互理解を行う団体、NPO法人デフテニスジャパンを2013年に設立。 https://www.facebook.com/kimihiro.naito.1
NPO法人デフテニスジャパン
2013年設立。ノーマライゼーション促進を目的に、障害者と健常者のスポーツを通した交流を促進する活動を続けている。今後はデフテニスに限らず、「体育会×障がい者」の交流の場を増やし、学生には自分らしさ再発見の場、障害者には自分の障害を詳しく伝え、パフォーマンスを向上できる場にしたいと考えている。
http://deaftennisjapan.wix.com/deaf-tennis-japn