——道具不要・誰もが知る遊びの再発見
須川寛倫
1種類じゃない「鬼ごっこ」
誰もが遊んだことがある「鬼ごっこ」。かくれんぼと並んで最もポピュラーな遊びだが、大人になるにつれ、遊ぶ機会はなくなってくる(最後に遊んだのはいつか覚えているだろうか?)。知らない人がいないであろうこの遊び、実は推定500種類くらいあるという事実をご存じだろうか。鬼の数が増えていく「手つなぎ鬼」、警察と泥棒に分かれて団体戦で行う「ケイドロ」……いずれも有名な「鬼ごっこ」の一種だ。さらに左の写真は「ことろことろ(子取ろ子取ろ)」という遊びの様子だ。子取り鬼など別の呼び方もあるこの遊び、江戸時代の随筆にその名が見られるくらい歴史がある。ルールはまず鬼と親を決め、参加者は親を先頭に一列になり、前の人の肩をつかむ。あとは、最後尾の人が鬼に捕まらないよう逃げ回るというものだ。
「鬼ごっこ」が近年、大人の間でも注目されていることは、ニュースで聞いたことがあるだろう。2010年には協会も設立され、TVや雑誌などで盛んに取り上げられている。
注目される理由はいくつもある。誰もがルールを知っているなじみ深い遊びだし、運動が苦手な人がいても、ルールを工夫してハンデをつけて楽しめる。さらに、単なる遊びという枠を超えスポーツに必要な資質が求められるということも見逃せない。実際に、前出の協会は「スポーツ鬼ごっこ」のルールを定めている。「鬼ごっこがスポーツになるの?」と思われるかもしれないが、思い出してみてほしい。鬼ごっこには、脚力や瞬発力はもちろん瞬時の状況判断が求められる。鬼になったとき、近くにいる足の速い人を追うのか、遠くにいる足の遅い人を追うのか。じっと動かずに様子を見て狙いを定めるのか、それともすぐに追いかけるのか。自分の足の速さ、逃げる人の考えなどを考慮して、瞬時に判断を下さなければいけない。
だが私が一番、強調したいのは、「交流を深める道具になる」という点だ。誰でも楽しめるし、鬼ごっこのコツを話し合うなどちょっと工夫すれば、親子の会話にもなる。先ほど触れた「ことろことろ」では参加者同士が触れ合わなければならないし、チームで逃げるために連帯感が生まれる。個人戦の鬼ごっこよりもさらに親近感が増すだろう。
特別に道具を準備する必要もない鬼ごっこ。「子どもの遊び」などと決めつけず、いざ始めると大人も本気になってしまうこと請け合いだ。今週末は親子で鬼ごっこを遊んでみてはどうだろうか。
PROFILE
須川寛倫 SUGAWA Hirotsugu
法政大学社会学部メディア社会学科卒。スポーツを活用した地域コミュニティ活性化に関心を持つ。インターンを経験した四国アイランドリーグ高知でブルキナファソ人の選手と出会い、「スポーツ×国際交流」を実現するスポーツツーリズムにも強い関心を抱くようになる。現在は仕事(旅行会社)のかたわら、ブルキナファソ野球を応援する会でも活動している。https://www.facebook.com/hirotsugu.sugawa