まとめ記事

スポーツ指導者の配置とコミュニティの創造は共存できるのか?

今年の7月に日本体育協会の方で「総合型地域スポーツクラブ育成プラン2013」というものが策定されました。
そこには「スポーツを核とした豊かな地域コミュニティの創造」という基本理念や「活動のあり方」「クラブ組織のあり方」「活動財源の確保」といった基本方針(クラブ育成の方向性)が書かれています。

「スポーツを核とした豊かな地域コミュニティの創造」ということは、スポーツ振興ではなく、地域振興に重きを置かれているようにも感じられます。
またこのような基本理念に落ち着いたこと自体意外に感じましたが、真の地域コミュニティを創造しようとしている自身から見ると非常に難しいことですし、その理念と現状があまりにも乖離しているように見えてしまいます。
その辺のことを、今回は一つの問題提起として具体的に綴りたいと思います。

埼玉県の場合、総合型地域スポーツクラブとして認知される条件の一つに「適切な指導者を配置すること」という条件があります。
(スポーツ振興くじ助成を申請する場合にも、助成対象クラブ条件の一つとして「会員の中に本会公認スポーツ指導者等の有資格指導者がおり、指導者の中心になって指導にあたっている。」というのがあり、全国的にも共通だと思います。)

“指導者”という言葉一つをとっても解釈は様々あるのかもしれませんが、指導者というのはたいてい何かの種目の専門的な指導者を指すと思います。したがって、指導者の指導によって健康的になったり、(種目の)技術が向上するということが一番の効果になってくると思います。

この「健康」や「技術の向上」と「豊かな地域コミュニティの創造」がどう結びつくのか?というのが明確になっていないように感じられます。

そこで今後どんな方向性が考えられるか?
「適切な指導者の配置」を削除する方向とそのまま残すという2つの方向性を述べたいと思います。

まず「適切な指導者の配置」という文言を削除すれば、地域コミュニティの創造にぐっと近づくと思います。
絶対的な指導者がいないことで、一人ひとりの参加している感覚が高まり、コミュニティ化しやすいためです。
(専門的な指導者がいることで”コミュニティ”ではなく”サービス”になってしまいますし、活動終了後に懇親会が行われさえすればコミュニティができるという話でもないと思います)

また現段階で条件にこのようなことが盛り込まれていると、立ち上げる際にいきなり専門指導者を配置しようと動くクラブがほとんどになってしまうと思います。
本来はそうではなく、「様々な方に参加していただいてその中から自然と指導者が生まれる」べきで、削除しなくとも現在の文言に補足説明を加えた方がよいと思います。

そしてもう一つは、種目別指導者にファシリテーションスキル、コーディネートスキルを身につけていただくという方向性です。
以前「(主に地域の)スポーツ業界の変革が加速しない3つの理由」というタイトルでブログを書き、”地域リテラシー”の不足を指摘しましたが、同様にファシリテーションやコーディネートのスキル、マインドが指導者スキル以上にコミュニティの創造には不可欠です。

きゅぽらスポーツコミュニティで「交流型スポーツ企画運営ガイド」を作成し体系化したのは、上で述べてきた課題解決のためでもあります。

ファシリテーションやコーディネート感覚のある人材がスポーツ界で活躍できる体制を整えるか、現スポーツ指導者が新たに感覚を身につけるか、そうした動きが出てこないと豊かな地域コミュニティを創造することは難しいと思います。