超人スポーツ、ゆるスポーツ……新しいカテゴリーが登場
最近、新種のスポーツ協会の設立が相次いでいます。「超人スポーツ協会」(写真。慶應義塾大での説明会の様子)「世界ゆるスポーツ協会」といったものです。2020東京オリンピック・パラリンピックに向けて、「誰もが身近にスポーツを楽しめるように」という意識の高まりが影響しているようです。今回は、これからさらに広がりそうな動きを3つ紹介します。
石井邦知(こむすぽ編集長)
1.「障害者スポーツのユニバーサル化」――健常者が障害者スポーツをプレー
障害者スポーツとは元々既存のスポーツを障害者の要求に応じて修正したものが多いと言われていますが、最近は逆の動きが起きています。健常者が、「アイマスクをつけてボールを蹴る」「車いすに乗って前後左右に動きながら球技をする」ことによって、障害の有無に関係なく一緒に楽しむことができます(ユニバーサル化)。
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健常者がパラスポーツ選手と一緒にプレーしてもまったく通用しませんが、パラスポーツ選手のすごさを体感できますし、見ることへの興味も広がるでしょう。パラリンピック種目のスポーツを体験できる場は限られていますが、2020年の東京パラリンピックに向けて今後こうした場が増えるはずです。
感覚や身体の一部が制限された状態でプレーすることで、運動レベルに関係なく誰でも楽しめる可能性も生まれやすくなります。
2.「”ニュースポーツ”からさらにハードルを下げたスポーツ」――タグラグビーよりハードルを下げて
ラグビーのタックルをタグ(飾りひも)に置き換えた「タグラグビー」、バレーボールのボールやコートの大きさなど変えた「ソフトバレーボール」など、多くの人々が楽しめるよう既存のスポーツのルールを変えた「ニュースポーツ」ですが、今やこれらも競技化されてレベルが徐々に上がり、誰でも気軽に楽しめるという状況ではなくなりつつあります。そこで、最近は、ニュースポーツや既存のスポーツのルールをさらに変えてハードルを下げる動きが起きています。こむすぽでも取り上げた、タグラグビーで走るのを禁止にした「ウォーキングタグラグビー」が一例です。
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また道具いらずで鬼ごっこ感覚で楽しめると言われるインド発のスポーツ「カバディ」もタックルなど激しい面があるため、タグラグビーと同じタグを使って行う「タグカバディ」が先日行われました。
こうした新たに登場するスポーツは、運動レベルに関係なく誰でも楽しめるようにルールが変更されているようです。
3.「eスポーツ、テクノスポーツ」――IT・科学技術との組み合わせから生まれたスポーツ
体験型ゲーム「eスポーツグラウンド」が注目されています。床をスクリーンにし、映し出された映像の中で自分の体を使ってボールを跳ね返したり、パネルをめくったりする新感覚体感アトラクション。アミューズメント施設のラウンドワンでも一部導入されています。
先ほど挙げた超人スポーツ協会でも、HADOという、ヘッドマウントディスプレーをかけると目の前の風景がAR(拡張現実)の映像と一緒に映し出される仕組みのものをスポーツとして広げようとしています。共通するのは、フィールドが広がり、通常のスポーツとはまた異なる新たな感覚が求められます。
また、パワードスーツやロボットアーム、脳波で操縦するブレイン・コンピューター・インタフェースを利用する人たちによるオリンピック「Cybathlon(サイバスロン)」が2016年にスイスで開催されます。
道具や技術の進化によって、筋力・五感・身体能力・動作が拡張され、人間ができなかったことが可能になりますし、年齢・性別・体格・能力が関係なくなるという意味で、新たなスポーツとして活用が広がる可能性があります。
3つの動きは今後さらに広がり、誰もがスポーツを楽しめる環境ができると思います。こむすぽでは今後も、新種の誰でも楽しめそうなスポーツを紹介するとともに、こうした動きを紹介することで環境づくりに寄与したいと考えています。
石井 邦知 ISHII Kunitomo
2011年2月に埼玉県川口市を拠点に総合型地域スポーツクラブきゅぽらスポーツコミュニティを設立。主に(フットサルやバレーボールなどの)チームスポーツと(異業種交流、国際交流などの)テーマを掛け合わせた活動を行い、新たに30以上の新規の企画創出(協働を含む)を実現。
これまでの取り組みの標準化と他地域の展開を目指して、2014年3月に一般社団法人日本コムスポーツ協会を設立(代表理事)。
http://twitter.com/ComComSports