石井邦知
埼玉県川口市でスポーツコミュニティを運営する中で筆者が感じた“開かれたスポーツコミュニティ”の作り方とは――。初回は異分野コミュニティからの学びについて考えます。
第1回 料理、読書……異分野コミュニティから学べること
参加者増やすため種目を増やして生まれたジレンマ
「スポーツ好きだけで集まったコミュニティだと、スポーツに興味がない人たちが参入しにくい、閉じたコミュニティになりがちです」——。
コミュニティデザイナーとして著名な山崎亮氏の言葉です(注1)。スポーツ関係者は耳が痛いかもしれませんが、”コミュニティ”に関心があっても”スポーツコミュニティ”に関心がない方が多いのもまた事実で、受け流してはいけない論点です。
今回は「閉じたスポーツコミュニティにならないために必要なこと」について改めて考えてみたいと思います。
まず、私が総合型地域スポーツクラブ「きゅぽらスポーツコミュニティ」(きゅぽらスポーツ)の活動を通して感じているスポーツでコミュニティを形成することの難しさについて紹介したいと思います。きゅぽらスポーツは私が2011年に立ち上げた埼玉県川口市を拠点とする団体で、これまでに3年間で合計500人以上が参加しています。1年目は大人を対象にフットサルとバレーボールを主にやっていましたが、規模を拡大すべく、参加者の要望も踏まえ、2年目からバスケットボールやバドミントン、卓球、ソフトバレーボールを追加。今では運動会、球技大会(ドッジボールやポートボールなど)も開催するようになりました。最近では体育館で活動する際には、コートを区切って同時に複数種目をやることも常態化しています。
取り組むスポーツを増やし、複数のスポーツを同時に楽しめるようにするなど、より多くの方のニーズにマッチし参加者の間口が広がるよう工夫し、参加者は増えているのですが、一方で全体をまとめる難しさも痛感しています。
過去の参加者のうち2割ほどは複数種目に参加していますが、「バレーボールをするなら参加する」「バスケットボールがしたいから行く」「バドミントンの日は行きたい」という方が多いのも事実です。特定の種目が好きなメンバーが定着すると、プレイのレベルも徐々に上がり、また深い交流ができるようになるのですが、新規参加者が入りづらくなる恐れもあり、コミュニティとしての広がりが期待できないジレンマが生まれます。
そこで、スポーツ以外のコミュニティがどうやって“開かれた状態”を保とうとしているのか、実際に私が関わったコミュニティを例に挙げてみます。
◆料理
生活において、食がスポーツより優先度が高いのは疑う余地がありません。日常的に行うものなので、料理をすることへの抵抗感は少ない人が多いでしょう。しかし、「○○を作るなら参加する」というような“好み”は、スポーツに比べて参加するかどうかを決める上で重要ではないようです。多くは「○○を作りたいから参加する」というより、「料理が好きだから」「料理を楽しみたいから」参加しているように私は感じています。
◆読書
「他の参加者の感想や気づきを聞くことで自分の視野が広がる」と感じている方も多いと思われます。したがって「ビジネス本の読書会だから参加する」「小説の読書会しか行かない」いうこだわりを持った方も(いない訳ではないですが)少なく、単に「読書会」という名称でも参加者は集まりやすいように感じています。
◆合唱
参加者の希望は何より歌えることで、「この曲を歌うなら参加したい」というこだわりはあまりないように思います。定期的に開催しているところでも、時期を区切って歌う曲を入れ替えられますので、その都度新たなメンバー募集をしやすい特徴があると考えます。
こうした異分野のコミュニティで参加者が求めている特徴——合唱でいう新鮮な要素を盛り込める点など――を取り入れることで、参加のハードルの低い“開かれたスポーツコミュニティ”への道が見えてくるのではないでしょうか。
注1:2013年11月5日に都内で行われた、公益財団法人日本レクリエーション協会主催の「若者のスポーツ参加機会拡充を通じた地域コミュニティ活性化促進事業シンポジウム」にて。
石井邦知 ISHII Kunitomo
2011年2月に埼玉県川口市を拠点に総合型地域スポーツクラブきゅぽらスポーツコミュニティを設立。主にチームスポーツを通じて、人と人がつながる仕組みづくりや一人ひとりが役割を発揮できる場の創造に取り組む。これまでの取り組みの標準化と他地域の展開を目指して、2014年3月に一般社団法人日本コムスポーツ協会を設立(代表理事)。
https://twitter.com/ComComSports