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なぜ好きでもないハンドボールの試合を旅先のドイツで延々観てしまったのか ――野次馬心を刺激する、スポーツの“楽しい”画づくり

2014年11月19日
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 浅野慎二(エンジニア)

MLB、Jリーグなどとの共通点

今年夏に2週間ほど滞在したドイツのホテルで、テレビを付けたらハンドボールをやっていた。別にハンドボールがとりたてて好きなわけでもないし、選手の名前も分からないのだが、何気なく観はじめて、気づいたら2時間たっていた。

うまいか下手かも分からない。それでもビールを飲みながらゆっくり最後まで観戦できてしまった。日本ではテレビでやっていても見ることはないだろう。

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なぜそこまで魅力を感じたのか考えてみたが、思うに“楽しい画づくり”が成功していたからではないだろうか。カラフルなコート。ほぼ満席の観客席。データ量の豊富なTV放送……画面からは「これがとても楽しいスポーツだ」という雰囲気がビンビン伝わってきた。そうした画面から伝わる“楽しさ”があったからこそ、ハンドボールというスポーツのなによりもじっくり見れば面白いハンドボール自体のゲームが持つ魅力を知ることができた。

これまでにもスポーツを観て「楽しそう!」と思ったことはある。
中学生のときMLBに憧れていたが、一番の理由は美しい天然芝を持つ数々の個性的なボールパーク(球場)だ。当時、今から30年くらい前には日本人メジャーリーガーは一人もいなかったと思う。それでもときおりニュースで映る、温かく楽しそうな雰囲気のボールパークに想像力をたくましくしたものだ。その後日本でJリーグがブームを巻き起こすが、その要因のひとつも天然芝だったと思う。今まで見たことのない、美しい天然芝の空間に魅力を感じた人も多かったのではないか。

“楽しそう”を演出して成功した例として、K-1も挙げられると思う。それまで格闘技は“泥臭い”イメージがあったが、カラフルなカクテル光線を使った入場シーン、お祭り感をあおる演出。格闘技ファンならずとも、その画面を観れば「なにか楽しそうなことやってるなぁ」と思うはずだ。そんな野次馬心を刺激したことで、女性ファンなどの新しい客層を取り込むことができ、結果としてあれだけのブームになったのだろう。K-1以前の日本の格闘技界で、誰が若い女性たちが格闘家に「ピーター!!!」(ピーター・アーツのこと)と黄色い声援をあびせる状況が生まれると想像しただろうか。TVの演出で言えば、ジャニーズのタレントを起用したフジテレビのバレーボール中継も似たようなものかもしれない。

近年たくさんのスターを輩出しているフィギュアスケート中継でも、視聴者へさらなる楽しみを提供する試みをしている。そのひとつが画面上に予定演技を表示するというものだ。こうした詳細な演目の表示は一昔前にはなかった。

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逆転の貴公子がボクシング界の未来を憂いて

一方で、あいかわらず地味なイメージの代表格がゴルフだろう。石川遼や松山英樹など若いスターは生まれているし、競技人口も多いはずなのに日曜のTV中継は視聴率でかなり苦労をしているらしい。ショットを打つプレーヤーを切り替えて淡々と進む中継スタイルには、ゴルフファン以外の人たちの野次馬心を刺激する“楽しさ”はない。

逆転の貴公子と呼ばれたプロボクサー高橋ナオトは、ショーアップされたプロレスの演出を観て「ボクシング界も見習わなければならない」と感じたそうである。格闘技といえばボクシングと言われた過去にあぐらをかき、魅せようという努力を怠っているとボクシングはマイナーな存在に落ちてしまう、と……。

マイナーなスポーツがメジャーになるためには、野次馬心を刺激し、中継の画面から“倒しそう”という雰囲気を伝えられるかがをカギになる。スポーツの中継を観たときに、試合結果やプレイの内容だけでなく、「画づくり」に注意してみると、また違った面白さがあると思う。

 

プロフィール 浅野慎二 ASANO Shinji

浅野 慎二

浅野 慎二

1974年生まれ。スポーツ好きのITエンジニア。仕事の傍らヒューマンアカデミーの『スポーツマネージメント講座』修了。もっと気軽にスポーツを楽しめる世界を目指し活動中!!

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