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再起をかけたベテランGKから学んだこと ――ひとつのゴールが他チームのサポーターを救った理由

2014年12月3日
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深谷 友紀(こむすぽ編集部)

Jリーグ史上初の出来事が起きた週末

 

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2014年のJリーグも最終戦を残すだけという大詰め、リーグ史上初めての出来事が起きた。

それはJ1への昇格チームを決めるJ2のプレーオフ準決勝、ジュビロ磐田対モンテディオ山形戦でのことだ。後半アディショナルタイム(ロスタイム)に入って1―1。引き分けならレギュラーシーズン上位のジュビロ磐田が決勝に進むことになる。

残り時間はほとんどない。このまま引き分けで終わると思われたが、コーナーキックのチャンスで、攻撃参加すべく相手ゴール前まで上がっていたゴールキーパー(GK)山岸範宏(36)のヘディングシュートが決まり、山形が勝利。決勝に進み、J1昇格に王手をかけた。GKのヘディングシュートによるゴールはJリーグで初めてで、GKの得点自体、リーグの歴史の中で今回含めて7点しかない。

しかしこのゴールは偶然に起きた奇跡などではない。山岸がこのような場面想定して準備していたからこそ成し得たのだ。新聞報道によると、練習ではうまく決まらなかったというから、本番のあの土壇場で決めた本人が一番驚いているかもしれない。

 

あきらめずに続けることの難しさ、大切さ

2014年の6月に山形に移籍する前、山岸は浦和で熾烈なポジション争いを強いられていた。GKは一度レギュラーが決まると、控えはなかなか出場機会が回ってこないポジション。浦和では試合に出られない日々が続いた。だがそんな中でも山岸は準備を怠らなかった。チームを盛り上げたり喝を入れたりして、控えながらチームを支えた。試合に出るのもピンチの場面が多かったが、いつも仕事をきっちりこなし、度々チームを救った。私は浦和サポーターとして、彼のこうした姿勢に感心していた。

山岸は現在36歳と若くはない。だがGKは寿命の長いポジションだから、まだまだやれる。出場機会を求め、再起をかけて山岸は移籍を決断した。しかし彼の前評判は高かったわけではなく、山形のファン・サポーターからも歓迎されていたわけではなかった。

しかし彼は新天地でも、浦和時代と同様、仕事をした。ピンチを救い、チームを引っ張った。ファン・サポーターとの距離を縮め、徐々に信頼を勝ち取った。山岸が加入したことで、チームは上位を狙えるようになった。

リーグ史上初めてという偉業を成すことができたのは、どんな些細なことでも、手を抜かず、あきらめずに準備を続けたからだ。これはスポーツに限ったことではない。起こるかもしれない事態に備え、諦めず、絶対にやり抜くと言う気持ちをもって臨むことで、目標に近づくことができる……。昔から彼を知っている浦和サポーターとして、そんな当たり前だが見過ごされがちなことの大切をさ、彼の姿勢からあらためて学んだ。

実は山岸がゴールを決めた日の前日、私が応援する浦和レッズは、勝てば優勝が決まるという大一番、サガン鳥栖戦に臨んだ。終盤まで1-0でリードしていたものの、ラストワンプレーで同点に追いつかれ、2位のガンバ大阪に首位を明け渡してしまっていた。

私を含め浦和サポーターは失意のどん底に落ちていた。そんな中での山岸の劇的ゴールを、浦和サポーターは「まだ諦めんなよ!」という山岸からのメッセージと受け止めている。

Jリーグは12月6日、最終戦第34節が行われる。勝ち点62で並んでいる浦和と大阪。最終節の相手はそれぞれ8位の名古屋と最下位の徳島。事前の予想では大阪が有利といわれており、浦和の優勝の可能性は薄いかもしれない。

しかし、まだ何が起こるか分からない。それは私たちが一番よく知っている。

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