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真の地方創生を実現するためにスポーツが果たし得る3つの役割

2015年1月23日

■地方創生の実現に向かっているつもりでもそうなっていないケースが多い

現政権は”地方創生”を重点政策に掲げ、皆さん自身も”地方創生”というキーワードを目にする機会が増えたのではないでしょうか?

今月には、内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部より、「平成27年度予算政府案におけるまち・ひと・しごと創生関連事業」の全体も発表され、
①地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする
②地方に新しいひとの流れをつくる
③若い世代の結婚、出産、子育ての希望をかなえる
④時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに地域と地域を連携する
という4つの軸に添った様々な事業に対してどれだけの予算をつけるかが明らかになりました。

しかし、こうして予算をつけて全国の地方自治体に補助金を交付すること自体、「すでに失敗している」という指摘もあり、補助金がなくなった後にも継続できる事業なのか、そして本当に地方創生を実現できるのかは疑問が残ります。

※参考記事:なぜ地方は補助金をもらっても衰退するのか

こうした状況の中で、スポーツが地方創生にいかに貢献していけるかを今回明らかにしたいわけですが、現状スポーツ(主体は総合型地域スポーツクラブなどの地域スポーツ団体)と各自治体が協働・連携するとなった時には、自治体から事業を委託されて行うというケースが目立ちます。

具体的には公共施設の管理運営をする指定管理事業を筆頭に、健康促進事業などを受託している団体も多いでしょう。

民に委託することで効率的になっている部分もあるとは思いますが、一方で委託費が値下げ傾向にあったり、制度上積極的に営業を行うインセンティブがもてないなどの問題もあり、「新たに雇用が生み出される」「財政の収支が改善される」などの劇的なイノベーションを行うことは難しい状況です。

これに対してもすでに指定管理とは全く異なる新しい公民連携の体制で、きっちりと黒字化している事業も存在します。

※参考記事:岩手県紫波町「オガールプロジェクト」 補助金に頼らない新しい公民連携の未来予想図

こうした成功事例も踏まえ(成功事例という言い方はよくないかもしれませんが)、国の補助金に頼ることなく真の地方創生を実現するためにスポーツはどのような形で貢献が可能なのか、個人的な考えを3つの観点でまとめたいと思います。

1.人を誘致する・呼び込む

昨年9月に消滅可能性のある自治体が発表され、全国各地で危機感は高まったでしょうし、人をいかに呼び込むかはとても重要な視点です。

観光庁が平成20年に創設された影響もあり、観光客の誘致は全国到るところで積極的に行われていますし、最近は移住であれば島根県の海士町が、サテライトオフィス誘致であれば徳島県の神山町が先端事例として注目されています。
ただし最先端の取り組みであればインパクトは残せるものの、後から始めた地域は他地域と差別化できなければ意味がないとも言えるでしょう。
その差別化の方法の一つとしてスポーツの活用が考えられます。

観光庁が積極的に進めようとしたこともあり、マラソンランナーに大会参加とセットで観光を楽しんでもらったり、スポーツ合宿を誘致する(積極的に誘致するために、自治体の要綱に盛り込んでいる事例もあります)などの「スポーツツーリズム」は全国で広がってきていると思いますし、今後はスポーツの中でもさらに細かな差別化が求められてきます。

そんな中、元サッカー日本代表監督の岡田武史氏は、愛媛県今治市にあるサッカークラブ「今治FC」のオーナーとなり、岡田メソッド(サッカー指導)を確立し、国内外問わず人を集めようとしています。
※参考記事:クラブ経営と地方活性化

一方で、沖縄県浦添市は市がハンドボール王国都市宣言を掲げ、スポーツで地域の魅力を高めようとしています。

そして一つ注目すべきは、岡田氏の「既存のものをつぶすにはエネルギーがいるし、町の規模が大きいと一つになれる感覚がない」という発言です。
正にその通りで、適正な規模(今治市は人口17万人)でやってみることが重要になってくるでしょう。

事例は、サッカー、ハンドボールというスポーツ種目による差別化になってしまいましたが、個人的には、少子化の影響で野球とサッカーなど複数のチームスポーツの実施(主に部活動)が困難な地域で、全生徒が3種目くらいをオールラウンドにできるようにすることで、複数のチームスポーツ環境を維持するというユニークな取り組みが実施できないかと本気で考えています。

こうしたユニークな取り組みでいかに人を巻き込んでいけるかが今後のポイントになってくると思います。

2.オリジナルの商品を開発、販売する

こちらも大括りでは、人を呼び込むのと同様に収入を増やすという観点です。

観光と同様に特産品開発による産業振興もここ10年くらいで一気に広がった印象を受けますが、(都内に各地のアンテナショップが存在していることもそれを物語っているでしょう)スポーツに関連するものとしては、”ご当地スポーツ飲料”を開発している事例も見られます。
※参考記事:ご当地スポーツ飲料 岩出の2社が開発

開発にあたっては、相当な地域資源の見直しの時間を要するでしょうが、特産品の開発のみならず、廃校なども含めた活用されていない空間やモノ、特許などを活かすという発想も一つにはあると思っています。

一例を挙げれば、特に学校体育などで使用するスポーツ用具は、1年の中で特定の期間にしか使用しない用具も存在するでしょうし、そういったものをレンタル事業化するといったことも可能性として0ではないかなと思っています。

3.コストを削減する

こちらは1・2と対照的で「歳出をいかに減らすか?」ということですが、そこにスポーツが貢献できないかという視点です。(コストを削減し、その浮いた分で投資していくという考え方)

赤字に陥った自治体を見てみると、赤字要因の一つに国民健康保険事業があります。
その事業の中で歳出の内訳として大きいのは、保険給付金や後期高齢者支援金となっています。

要は医療費が赤字の要因になりやすいので、削減できないかということです。

ただし、高血圧や糖尿病の投薬治療前に,運動療法を行うことは有効とのエビデンスがあるものの、患者に運動を指示する「運動処方」を、「健康運動指導士」の資格を持ったスポーツトレーナーがすることは制度的に認められていません。(=保険上の診療報酬が認められていない)

したがって、スポーツが貢献できるのは”予防”の領域です。

事例として、高齢者の健康促進のために、万歩計やノルディックウォーキング用ポールを一定期間無償で貸し出すことを要綱に盛り込んでいる自治体も存在しますし、認知症予防という位置づけでダンスを行っている地域などもあります。(欧米を見れば、”ヘルスプロモーション”を積極的に行い、人々の健康リテラシーを高める取り組みを行っている地域も存在します)

しかし、こうした健康促進事業の取り組みは、健康や介護領域の部署の働きかけにより行われ補助金で成り立っているケースも多くその場合に参加者は無料か低料金でサービスを受けられることがほとんどです。

持続可能性には疑問も残りますし、(健康促進事業に限りませんが)公と民のサービスの料金格差が大きいのも一つの問題と認識しています。

一方で実際にまだ症状が出ていないのに、お金をかけてまで予防に取り組む人がいるかという観点も考える必要がありますが、ここもスポーツが力を発揮できる領域であると考えます。

「健康のため」ではなく、スポーツそのものや人との関わりを楽しんでいただく場をつくり(そこには「心の健康」という役割もあります)、こうした関わりを通して、健康リテラシーの向上につなげたり、健康診断機能の一部を担うなどして、気づきのきっかけを与えるという流れをつくることも一つ重要になってくるでしょう。

健康に対する意識が高い方は、健康促進のために行うことは問題ないですし抵抗もないでしょうが、意識していない方に対して働きかけていくためにはスポーツが媒介となり得ますし、補助金に頼ることなく最終的に、医療費削減に結びつけられる仕組みを構築できればと考えています。

以上3つの観点から述べさせていただきました。まだまだ整理しきれていない部分も多々ありますが、1と3に関しては今すぐにでも動いていきたいと考えています。

ぜひできるところから一緒に取り組んでいただける同志も増えればということを願っています!