コミュニティ

お見合い写真と愛のムチを持って【UNDOKAI練習篇】--連載「はじめてのUNDOKAI、アフリカへ往く」④

マラウイのセンセイたちが選んだ種目はこれ

小原裕子(公益社団法人 青年海外協力協会)

マラウイで人気があるスポーツは、フットボールやネットボール(バスケットボールに似た競技)だそうだ。しかし、やはり運動会でやるスポーツといえば、徒競走や綱引き、玉入れや大玉ころがし。UNDOKAIでも、こうしたいわゆる“運動会らしい競技”をやりたいと考えていた。

第1回 「”オタクカルチャー”でも”カワイイ”でもないクールジャパン」
第2回 短期間で片思いを成就させる――開発途上国で働くということ
第3回 マラウイ現地レポ 日本から丸1日、ようやく出会えたキューピッドの名は“坂田さん”
第4回 お見合い写真と愛のムチを持って【UNDOKAI練習篇】(今回)

とはいえ、現地の人たちはそんな競技など見たことがない。どうやって理解してもらおうかと、事前に坂田キューピッドのアドバイスを請うていた。するとズバリ「写真を使うべし」とのお告げ。
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だが電気も水道もない学校でプロジェクターを使うのは難しい。競技の様子を収めた写真を拡大印刷し持参した。さしずめ今回の“恋愛”における「お見合い写真」を見せたところ、日本のUNDOKAI種目との初めての邂逅を果たしたマラウイ人教師たちの目は、あっという間にキラキラと輝きだした。その様子を見て秘かにガッツポーズした。

写真を見せながら競技を説明した後、先生たちに種目を選んでもらった。採用されたのは

・ 大縄跳び
・ 綱引き
・ 組み体操
・ ボール運びレース
・ 徒競走
・ ドラゴンレース(水道管パイプに数人またがって走る)

だった。

できれば一人あたり2~3種目体験してもらいたいところだが、1400人もいる子どもたちに練習をさせるだけでも大変なので、学年ごとに1つ種目を決めてもらうことにした。

午前10時には学校が終わる理由

マタピラ小の朝は早い。
午前7時過ぎには朝会が始まり、10時には低学年の授業は終わってしまう。

そこには悲しい理由がある。

低学年の教室には机も椅子もなく、生徒たちは地べたに座って授業を受ける。1学年約200人の児童がまさにすし詰め状態で1人の先生から授業を受ける。教科書や文具も十分でなく、先生も生徒も3時間が我慢の限界なのだ。

多くの子どもたちが読み書きや簡単な計算すらできないまま、小学校をドロップアウトする。子どもたちは労働力として農作業や家事に駆り出される。家族の土地や畑を引き継ぐことが多いため、年齢にかかわらず、「学校では最低限の読み書きさえできるようになれば良し」とされてしまう。特に女子への教育は特に消極的で、10代での結婚や出産は珍しいことではない。最終学年の8年生が43人しかいないことからも、その深刻さが分かる。マラウイのすべての小学校がこうではないが、村落部の学校はこういう状況なのである。伝統やきまりがあるわけでも、親が学校に行くなと言うわけでもない。しかし、教育や学校に対する意識が、当事者も含めて「なんとなく」なのだ。

だが嬉しいことに、UNDOKAIの練習期間中、学校から去っていた子どもたちが戻ってきた。
「なんだか楽しいことをやっているらしい」という噂が広まっていたのだ。先生たちからは「たくさんいすぎて管理しきれなくて困る」という声も聴かれたが、実は先生たちにとってもそれは同じだった。信じられない話だが、教員の給与未払いが半年以上続き、先生たちはストライキを起こしていた。にもかかわらず、「UDNOKAIは子どもにとっていいこと。私たちも楽しいし」と練習を続けてくれたのだ。

本当に娯楽が少ない村落部。ボールや縄、綱をつかって身体を動かすことは楽しくて仕方がないようで、自分の学年の練習が終わっても、グラウンドに残って他の学年の練習を眺める子どもたちがたくさんいた(興奮すると近くに寄ってきてしまい、収集がつかなくなるのが玉にキズ)。

子どもたちにとってスペシャルな“ピカピカのバケツ”

楽しいこと、うれしいこと、面白いことに正直な彼ら。真新しい用具に大興奮。使っているのはマラウイで入手できるものばかり――バケツとか洗濯ロープなど――だが、村落部に住む彼らにとってはピカピカに輝くバケツはスペシャルなのだ。見本を見せる度に、「ワー!!! キャー!!!」の大歓声。
そして、早く自分もやりたいから、用具の前に一列に並ぶ。これには私が驚かされた。なぜなら、他国(カリブ海)では有りえなかったことなのだ。もしかしたら、マラウイ人は日本人と深いところで似ているのかもしれない。

初めはルール何もわからず、綱引きをやっても自分たちが勝ったことすら分らなかった。しかし、練習を重ねるうちにその面白さが分わかってきて、勝った時には大喜びするようになった。

そして、そこはやはり子どもたち。負けた子たちを冷やかすようになる。
ここでマダム・ユウコの愛のムチが入る。うまくできずに途中で投げ出す児童もいたが、なだめてはすかし、次第にUNDOKAIらしくなってきた。キューピッド坂田は子どもたちをなだめるのが本当に上手く、ムチを入れるマダムとキューピッドの抜群のコラボレーションによって子どもたちはみるみる上達していった。

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彼らの運動能力は本当に素晴らしい。やり方さえ分かってしまえば話は早い。約2週間、回数にして12回の練習で、彼らはUNDOKAIをやりきってしまったのだ。

UNDOKAIに向けて上達したのは、子どもたちだけではなかった。スカート・背広の先生たちが走り、笛を吹き、競技を判定し、子どもたちに指示を出せるようになったのだ。私には子どもたちの上達以上に、先生たちが楽しそうに指導していることがうれしかった。

次回、いよいよUNDOKAI本番!

※ 編集部からお知らせ ※

本連載の筆者に話を聞くミニセミナー開催します 4月24日(金)夜 @池袋

筆者の青年海外協力協会 小原裕子さんに、現地の様子を生で伺える場を報告会という形で設けさせていただくことになりました。

参加された皆さんには【マラウイ産マカダミアナッツのおやつ】も付いてきます!

なお、小原さんは今回のUNDOKAI以外にも、青年海外協力隊として中米で体育教師をした経験もお持ちです。

・スポーツ×途上国
・日本ならではのスポーツの良さとは?

といったことに関心のある方はぜひご参加ください。

また、こむすぽ編集部からのミニセミナーとして、原稿の書き方講座も少し時間とって行う予定です。
具体的に、こむすぽで採りあげられた記事を題材に、提出された原稿が、最初の状態から、編集部での推敲を経て、最終的にどういう記事になったのか。比較しながら、文章を書き方のコツも伝えます。

 

◇開催日時:4月24日(金)19時半~
※終了は21時半を予定し、その後は行ける方で懇親会も行います
◇参加費:1000円(事務費・資料費)
※スピーカー・内部関係者は無料となります
◇開催場所:がんばれ子供村2階コミュニティスペース
(住所:東京都豊島区雑司ヶ谷3-12-9、池袋駅東口から徒歩15~20分)