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「ボールをまっすぐ投げられない!?――難しさと反省点」 全国ビリの投力の子供たちに埼玉西武ライオンズが投げ方を教えた話【連載】第2回

2015年7月15日
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伊倉晶子(公益財団法人 埼玉県体育協会 クラブアドバイザー)
写真提供=只佐由紀子(志木市放課後子ども教室・宗岡りんくす)

全国ビリをあらそっている埼玉県の子ども達の「投げる力」を挙げるため、県体育協会に所属する筆者が立ち上げた企画の奮闘記。埼玉西武ライオンズと一般社団法人彩の国SCネットワークが行ったキャッチボール教室の当日の様子。

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第1回 「危機感――ライオンズとコラボした理由」
第2回 「ボールをまっすぐ投げられない!?――難しさと反省点」(今回)

キャッチボールに自信があった私がまさか……

ボールがまっすぐ投げられない――。

こう聞かされると驚く人も多いかもしれないが、子どもたちがボールを投げる場所や機会は相当減っている。驚いた方が「(子供たちがボールがまっすぐ投げられないのも)無理もない」とおそらく思ってしまうほどに……。

5月4日に埼玉県志木市で行われた「親子キャッチボール教室」。野球を知らないちびっこたちと保護者18組36人が参加した。この日使用したボールは、ライオンズアカデミーが用意した投げやすいもので、大きさも感触も軟式テニスのボールに近い。

「身体は、ボールを投げる方向に向けようね。ボールは腕だけで投げるんじゃないんだよ。身体を回転させるようにしてみよう」――。

元ライオンズ投手の星野智樹コーチがちびっこたちと保護者たちに投げ方について説明する。うなずきながら、真剣なまなざしできいているのは、子どもたちよりむしろパパたちだっただろうか。その後、コーチがお手本でひょいとボールを投げると、会場となった中学校のお隣にある高校まで飛んで行った。100メートルはあろうかという飛距離に、「おぉー」とわく会場、コーチはこともなげ。それはそうだ、彼はもともとプロなのだ。

コーチの指導をうけた後、さっそくボールを投げてみる。4列になり、前方約10メートルのところで、お手伝いの中学校野球部員たちが構えている。そこにえいやっと投げる。

だが届かないどころか、まっすぐすら飛んでいない。五月晴れの空に上下左右ボールが飛びかい、まるで運動会の「玉入れ」のような光景だった。

眉間にしわがよっているパパたちと、恥ずかしそうな子どもたち。列の後方でパパたちが、一斉にわが子に言葉をかける。

「身体の回転だよ」
「左手で投げる方向を指さしてみろ」
「持ち方がおかしいんじゃないか?」
「もっと足をひろげないと」

子どもたちの声は「できないよー」「やってるもん」と次第に小さくなっていった。

「うわ、ホントにみんなへたくそだな~」と思いながら、私も列に並んで投げてみた。コーチの説明とデモを見た私も、投げるフォームのイメージは完璧にできた。子どもの頃、家の前でしょっちゅう父とキャッチボールをし、マイグローブも持っていたこともあって、自信があった。

ボールを握り、前方に向かって縦に立ち、ふりかぶって、身体の回転をつかい、お手本のように投げた!……はずが、あえなく「玉入れ」の仲間入り。しかも振りきった右腕のヒジにズキンと痛みもおぼえる始末で、ただ単にまっすぐ投げることがいかに難しいのか痛感した。

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投げる力の向上に不可欠なものとは

これは反省なのだが、今回のイベントでは、コーチによる個別指導の時間がとれず、子どもたちは何回投げても上達することもなかった。上手くならないから面白いはずもない。時間が経つにつれ、デモで盛り上がっていた会場から子ども達の声も小さくなり、聞えなくなっていった。

この日分かったことは、「投げる」ことはすぐにはできるようにならないということだ。プロに投げ方を習えば、すぐにそれなりにできるものだと思い込んでいた。そうではなく、継続的にやらないとダメだ。

しかし、ことに子どもたち向けの企画では、「達成感」が必須だ。どんなに小さいことでも、「できた」と感じられること。それが「面白い」につながり、「もっとうまくなりたい」、そして「練習したい」となっていく。面白くもないことを、家に帰ってまで練習するはずがない。

これは当日のプログラム編成の点での反省だ。

ボール投げで静かになったグランドでは、次にキャッチボールをした。

幸いに、投げるのが下手な私も子どもたちも、無理のない短い距離で、相手の胸元をめがけて投げればそれなりに届き、パパたちの「いいぞ!」「ナイスキャッチ!」の声に、だんだんと笑顔が復活した。一人で遠くに投げることは面白く感じられなかっただろうが、二人一組で、相手に向かってボールを投げることは、「面白い」と感じてもらえたようだ。

前回少し紹介した文部科学省の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力運動能力テスト)では、「投力」を(ソフトボールの)「遠投」で測っている。このため、イベントを企画する際に、ボールのサイズなども調査で使うソフトボールに近い「野球」という種目に注目した。

しかし、投力の向上には継続性が必要で、そのためには「面白さ」が重要だということを痛感した。面白さを感じてもらうために「単に投げる」のではなく「相手に向かって投げる」ほうがいいなら、むしろ「ドッヂボール」のような、低学年でも参加しやすいメニューのほうが、「投力向上」に有効なのかもしれない。

キャッチボール教室は終わったが、「投力向上」のための企画は今後も続けるだけに、次回以降の企画の中身について、再考しなおさなければいけない、反省の多い1日だった。

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※ 次回掲載は企画イベント実施日の都合で数か月先の予定です。

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